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宮本輝小説作品における回想場面配列法
~短編小説を資料にして~
目次
序章  研究概要

第一節 研究動機
第二節 研究目的
第三節 研究対象の性格

第一章 課題解明の方法

第一節 先行研究の整理
第二節 場面構成
第三節 回想が行われる形式と回想を行う人物の特徴
第四節 回想場面周辺の表現
第五節 回想の内容とその出来事が主人公に与えた影響との関連性
第六節 作品における回想場面のはたらき

第二章 作品から見た分析結果

第一節 個々の作品分析
第二節 作品分析表

第三章 分析項目から見た分析結果と考察

第一節 場面構成
第二節 回想の形式
第三節 回想場面周辺の表現
第四節 回想の内容とその出来事が主人公に与えた影響との関連性
第五節 作品における回想場面のはたらき
第六節 回想内容のタイプとはたらきの関連性

第四章 まとめと今後の課題

第一節 まとめ
第二節 今後の課題

おわりに

作品・参考文献一覧
序章  研究概要

第一節 研究動機
以前から宮本輝の作品は好きで読んでいた。宮本輝といえば、「優駿」「春の夢」「錦繍」のような長編小説が有名であるが、実は短編小説もすばらしい作品が多い。宮本輝の短編小説に多く見られる作品構成パターンは、主人公が語り手となり、過去の自分を振り返っていくものだ。過去とは、遠い昔の少年時代であったり、思春期真っ只中の青年時代であったり、ほんの5年前だったりする。

読んでいるうちに、最初は現在の話のはずなのだが、いつ間にか主人公の過去の思い出に引き込まれていることに気づく。一体どこから過去になったのか私はもう一度注意深く読み直してみないとわからない。不自然に感じず、ストーリーが過去に移行したのに気づかないのは、巧妙に現在と過去の文章をつなげているからだろう。ここに、宮本輝短編小説の魅力の一因があるのではないだろうかと考えた。私は、この現在から過去へとストーリーが移行していく回想場面の表現方法について調べたいと思い、卒業論文の題材にすることとした。
第二節 研究目的

 
回想場面は小説や物語に多用されており、そこに作者の意図する主題と深く関わってい
る内容が描かれているものが少なくない。しかし、回想場面についての研究というのはあ
まり聞いたことがないのではないだろうか。

本研究では、宮本輝の短編小説のみを対象と
して、宮本輝独自の作品の中での回想場面の組み込み方、作品における回想場面の効果な
ど、回想場面が持つ要素を色々な観点から解明していきたいと思う。

 
第三節 研究対象の性格
宮本輝の作品については様々な評価がなされているが、本研究では短編小説のみを研究対象としているので、彼の長編作品についての書評については触れないことにする。
宮本氏は短編集『真夏の犬』(文藝春秋 1993年4月)のあとがきにおいて、彼の書く短編小説と長編小説の違いについて以下のように述べている。
・・・・・・短篇でなければ成立しないテーマやモチーフもあるでしょうし、長篇でなければ構築しえない小説世界もあるのです。しかし、もっと別の視点でその違いを考えてみて、私は当時、次のような私論を述べました。
建物と、それを建てるために組んだ足場との関係を譬喩に使ってみたのです。つまり、組んだ足場だけを見せて、その中にどんな建物が隠されているのかを、読者のそれぞれの心によって透視させるのが短篇小説であり、足場をすべて取り払って、構築された建造物の外観を披露し、内部がいかなる間取りなのかを考えさせるのが長篇小説ではないのか、と。・・・・・・(p.225)

 

この言葉通り、宮本輝の短編はどれもはっきりとした外郭を表していない。必要最低限の情報だけを読者に与え、そこから先は読者に考えさせる。それゆえ、一回さらっとよんだくらいでは作品の奥深くまでは到底読むことができないのだ。

来生えつこは上記の宮本輝のことばについて以下のように述べている。
……あとがきで氏は、短篇小説と長篇小説の違いを述べていて、書き方のテクニックというか、構築の違いを言っている。あきらかに氏は、自分のテーゼを持って認識しつつ、短篇を書き、長篇小説と区別している。
純文学畑の作家は、私小説よりだったり、その作家の持つ匂いや感覚、筆致だけで読ませようとするところが多く、時に独善的であったりして、そこが今読者離れしている種だろう。
が、そういうところをかすめつつ、すりぬけつつ、氏はこの短篇郡を書きあげている。少年時代を描くと、時に個別の世界になってしまって、普遍性に欠けてしまう場合があるが、氏の場合は、場所は違っても、じわっと同世代の匂いが漂う。
…(中略)…
軽い若い子向きではなく、読み手の深さも要求される。混乱させられつつも、必死に向う側を読み取ろうとさせられることは、もしかしたら氏の手中にはいったことになるのか。……
(『新潮』四月臨時増刊 宮本輝 平成十一年四月 p.77)

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